大判例

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東京地方裁判所八王子支部 平成8年(ワ)2253号 判決

原告

三和八洲交通有限会社

右代表者代表取締役

吉川史朗

右訴訟代理人弁護士

吉田健一

土橋実

被告

田無市

右代表者市長

末木達男

右訴訟代理人弁護士

中村護

事実及び理由

第三 争点に対する判断

一  本件許可が無効であるとの主張の当否について

施設としての本件タクシープールが道路である本件土地を占有することにつき、被告が原告が構成員となっていない使用協議会に対し、道路法三二条に基づく本件許可を与えたことについては当事者間に争いがなく、そうすると、本件許可によって使用協議会は本件タクシープールのために一般人には許されない本件土地上に特別の使用権(講学上の特許使用)を取得したと解されるから使用脇議会の構成員が同協議会の設置した本件タクシープールを利用することができるが、その構成員でない原告が利用できないこと、また本件土地上に特別の使用権(占有許可)を得ていないことの結果として、独自にタクシープールを設けることもできないのは明らかである。

原告の主張は、本件許可には重大且つ明白な瑕疵があるので無効であるとして、これを前提に本件タクシープールが一般に供されている公衆用道路上に存することから原告にも使用権が存することの確認を求めているものがあるが、本件許可が無効であれば、使用協議会は本件タクシープールを設置することができなくなる筈で、従って本件タクシープールが存続することを前提にしては使用権の確認を求めることは出来ないから、その趣旨は原告が本件土地につき本来の道路として使用する権利の存することの確認を求めているものと解せられる。

そこで、本件許可に重大且つ明白な瑕疵があったか否かについて判断する。

先ず、本件タクシープールに対し、本件許可はなしえないとの主張であるが本件タクシープールは道路法三二条一項六号に規定する「商品の置場」もしくは「これらに類する施設」に該当し、同条一項本文の「継続して使用する場合」には断続的に道路の一定の場所を使用する場合も含まれると解されるから、本件許可が法律に根拠がないから無効であるとの主張は採用できない。

更に進んで内容の無効の主張について検討する。

〔証拠略〕によると、田無駅北口再開発事業が計画されたのは昭和四九年に遡るが、同計画に基づく駅前広場の築造工事が着工されたのは平成五年であり、平成八年三月に完成し三月八日から供用開始となったこと、駅前広場が造られる前の田無駅北口には西武新宿線に沿って幅員六・二七メートルの市道が存したが、タクシーのための特別のスペースはなく、三幸自動車株式会社と三幸交通株式会社はそれぞれ一七台と二台位の車を収容できる所有地を市道に面した場所に有していたからここを待機の場所として客を待ち受ける営業を行っていたこと、しかしこうした乗車のための敷地を有しない他のタクシー会社は事実上他の場所で乗せた客を降ろすことしかできなかったこと、そこで開発事業においては当初からタクシープールを設けることが計画され、整備された駅前広場は全体として延長一四六・七三米、幅員一六・二米ないし五五・五米の路線認定を受けた道路の区域であるが、本件タクシープールは専ら田無駅北口におけるタクシーの待機場所として設置されたもので、もともとタクシー以外の一般の通行は予定されていなかったこと、そして、被告はタクシープールを設ける場所が一七台の車を収容できる広さしかなく、混乱を避けるためにはタクシープールを利用できる業者の数を制限するのが相当であると夙に考えていたことから、この業者を三幸自動車株式会社、三幸交通株式会社、田無交通株式会社、西武ハイヤー株式会社の四社に限ったこと、被告がこの四社を選定したのは、三幸自動車株式会社と三幸交通株式会社の二社については、長年田無駅北口において営業を継続してきたことによる営業利益を無視するわけにはいかないであろうと考えたことにより、田無交通株式会社については田無市内に営業所を設けていることから、西武ハイヤー株式会社については、格別田無市内に営業所があるわけではないが駅前広場の土地の一部を所有する親会社の西武鉄道株式会社からの申し出を断れなかったことによるものであること、被告はこの四社を選定した後、各社毎にタクシープールの使用を保証するための法的手段たる道路法三二条の占有許可を与えるものではなく、四社が組織した使用協議会にこれを与えたのはタクシープールの管理については、そのなかでも各社がタクシープールを利用できる車の台数を決定するについては、業者の自主的な話し合いに委ねることの方が、被告が直接に業者の利害を調整して決めるより妥当であると判断したことによること、このため被告は使用協議会との間で本件タクシープールを使用する上での基本事項について協定書(〔証拠略〕)を平成八年四月一八日取り交わしているが、使用協議会を構成する四社が設けた使用協議会規約(〔証拠略〕)の内容については、四社の自主性に任せて格別の干渉を加えていないこと、使用協議規約(〔証拠略〕)によると、会員資格を田無市に営業所を有し、五年以上の営業実績がある法人企業及び西武ハイヤー株式会社をもって構成すると定めた上、議決事項のなかに新規会員の承認が含まれ、議決権については三幸交通株式会社のみが二議決を有し、他の法人は一社につき一議決権と定められていることからすると、使用協議会に新規会員として加入が認められるか否か、本件タクシープールの使用が認められるか否かは結局のところ現会員の四社なかんずく三幸交通株式会社の意思に左右されることが大きいと考えられるところ、現に、原告は本件タクシープールの使用が始まる前に被告の担当職員に陳情にいって、三幸交通株式会社の了解さえ得られれば被告はかまわないという趣旨のことを言われた経緯があること、以上の事実が認められる。

右に認定した事実によると、被告が、本件タクシープールの管理を私人である使用協議会に委ねていることは明らかであり、しかも、新規会員の加入についてまで使用協議会に委ねているのは、結果として、現在の会員の既得権を事実上保証することにもなり、常に公平な態度が求められる行政機関としてはどうかとの疑問が生じ、延いては使用協議会に対し与えた本件許可についてもその瑕疵を疑う余地があると言わねばならない。

しかし、仮に本件許可に瑕疵があるとしても、本件許可が無効であるというには、特に権限ある国家機関の判定をまつまでもなく、何人の判断によっても、ほぼ同一の結論に到達し得る程度に明らかな場合に限って瑕疵が重大且つ明白であると言えるのであるが、既に認定した本件許可に至った経緯、被告の意図が道路の管理を通じて道路の機能を保全し、交通の安全を確保することにあったことは否定できないことからすると、到底本件許可には右のような重大且つ明白な瑕疵が存するとまでは言えない。

二  国家賠償法に基づく損害賠償について

本件許可が無効であると断ぜられないとすると、これを前提とする国家賠償法に基づく損害賠償を求める請求が理由のないことも明らかである。

(裁判官 畔栁正義)

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